未来のない優しさ

「そのまま右向いてみろ」

…何となく…そうなのかな。
そうだといいなと無意識に願いながら右にゆっくり視線を移すと。

「…いた」

シルバーのセダン。
見慣れた車。
運転席から降りて、けだるく扉にもたれて私を見てる健吾がいた。

「帰るぞ」

携帯ごしに言い切られたって…。

「ちょっと…待って。まだ…」

「まさかまだ飲みに行くのか?」

「違うけど…」

興味津々な三人を見ながら、どうしようかと悩んでると、『ちっ』と舌打ちする音が聞こえる。

「あ、来た!」

「え?」

叫ぶ孝太郎の視線の先には、通りの向こうから歩いてくる健吾。

暗くてよくわからないけど、何だか機嫌悪そう…?