未来のない優しさ

『資料見つかったよ。
健吾の好きなミックスサンドも買ってきたし早く片付けよう』

女性の声。
健吾の近くにいるはずのその声に、とくんっと鼓動が跳ねた音を感じる。

『わかった。望のオフィスに行くから待ってろ』

健吾の呟いた望っていう名前が、更に私の心臓に突き刺さる。
うまく呼吸ができなくて携帯を持つ手が震える。

『ちゃんと戸締まりしろよ。
なるべく早く帰るから』

「うん…」

一言だけ…必死で言葉を
ささやいた。
自分で感じる以上の衝撃を私の体は受けたようで、思うように言葉が出ない。

『柚…?』

「あ…。私は大丈夫だから仕事頑張ってね」

『ああ…。ちゃんと薬飲んどけよ』

「わかった」

ちゃんと何気なく、話せたかな。
私の気持ちの揺れはばれなかったかな…。

小さく息を吐いて実感する。
どんなに私の気持ちをつかまれているかを。
私の一喜一憂は、健吾の思うがまま。