未来のない優しさ

華穂の指差す先には私の薬指に輝く婚約指輪。
昼の光に照らされて、キラキラと綺麗に存在を主張している。

｢そうかも…｣

思わず右手で指輪の感触を確かめてしまう…。
そうすると、じわじわくる安心感。

健吾に約束された未来が優しく私を包む気がする。

それでも、華穂に言われた言葉は完全に正しいわけじゃない。

｢不安はあるよ。

健吾には私よりもふさわしい人がいるって思っちゃうし…。

そういう人が現れた時に
ちゃんと諦めずに踏ん張れるか謎｣

空っぽになったコーヒーカップを見ながら敢えて軽く言ってみるけど、私の気持ちの中に居座る不安はまだまだ活動中。

健吾から与えられる愛情が、その不安感を封じているけれど。
きっと、健吾の気持ちの揺れに気付いた途端に、私の感情は不安定になってしまうと思う。