未来のない優しさ

何の気持ちも読み取れない瞳に見つめられて、責められているようだなとどんどん右下がりに落ち込んでいく。

「あの頃…。
人生で一番調子にのってたな。
バスケは全日本代表候補に選ばれて、女の子にも人気あって。
成績もトップだったしな…。天狗になって、世の中なめてた」

くくっと笑って、私の頬に残る涙を撫でてくれる。
その仕草とは逆に、冷めた瞳。
きっと、私の狡さに幻滅したはず…。
心臓が痛い。

「そんな天狗になってた俺を、周りには知られたくなくて、優しさっていう狡さで八方美人になって…いい人を演じてたんだ。

そんな俺が、柚の寂しさを無視して他の女と映画を観に行ってる姿を見られたって知って。

『信じられないの?』

なんて言葉で柚を責める事で責任転換したんだ。

柚を傷つけて…。

狡いのは俺だ」