未来のない優しさ

「何にやけてるのよ」

鋭い声に我に返った俺は
苦笑しながら美晴に視線を向けた。

相変わらず敵意剥き出しの目には、悲しみと苦しみの光。

「…柚、いい顔してるな」

肩をすくめながら言うと

「…その指輪。
婚約指輪なの?」

俺の言葉はまるで無視。
美晴には、俺と会話を楽しむ気はないらしいな…。
まぁ、予想通りだけどな。

「見たままに婚約指輪だ。ちなみに年末に結婚式だから、空けておいてくれ」

「な…っ。何勝手な事言ってるのよ。
柚ちゃん苦しめるだけ苦しめて…。
今更手元に置こうなんて
ずるい。
絶対に認めない」

「…」

「今までいろんな女と遊び回ってたくせに。
柚ちゃんの事苦しませて
人生目茶苦茶にしたくせに。
なんで今更柚ちゃんなのよ。
結婚したかったら遊び回ってた女の中から選べばいいじゃない」