未来のない優しさ

「で…今日は何の用だ?
お前が俺の前に現れる時は柚絡みだとは思うけどな…」

ここまで険悪な状態で現れるのは初めてだけど。

大きく顔をしかめて、しばらく棒立ちのまま俺を見る美晴。
瞳に光るのは黒い怒りを表す冷たさのかけら。

脇に下げた両手をぎゅっと握りしめて震えている事に気付かなければ、冷静にも見えるけれど。

何かに耐えながら、俺へ投げつけたい感情を抑えているのがわかって切ない。

「…じゃ、私は戻るから」

それまで静観していた望が部屋を出て行く。

「悪いな。何かあれば連絡する」

「うん。

沢木田建設の件、よろしくね」

そう言ってドアが閉まる間際に見せたのは…
笑いを堪えている苦しそうな顔。

ドアが完全に閉じた瞬間
聞こえてきた笑い声に思わず溜息が出る。