未来のない優しさ

「美晴…。
お前勘違いしてる…。
望とは、もうなんでもないから」

呆然と固まってソファに座ったままの望に気をつかいながら、美晴の側に近寄ると

「とりあえず、この女どっかにやって」

冷たく蔑んだ声が向けられた。
柚の事故以来、俺を家族とは認めずに厳しい態度だけで接してくる美晴には慣れてはいたけれど、
正直、時間と共にその距離も縮まるとどこかで楽観視してる部分もあった。

つかず離れずの、お互いをどこかで気遣いながら育ってきた兄妹としての絆を頼りに。

再び美晴から笑顔を向けられる日を期待していた。

事故から10年以上経っても尚、今のような冷たい言葉しか向けられないとは思ってもみなかった…。