未来のない優しさ

おそらく事務所の人間の静止を無視して強行突破しながら、俺の部屋に来たんだろう。
美晴の後ろを追ってきた何人かが、不安げに俺を気遣かっている。

「迷惑かけたみたいで
すみません。

俺の妹に間違いないんで大丈夫です。

…あれでも同業者で、敵にまわすと面倒なんで。
しばらく相手します」

ははっと笑いながら部屋に入り、後ろ手にそっとドアを閉めると。

相変わらず鋭い視線が
望を睨みつけている。
ジーンズのショートパンツにパーカーのこの女が弁護士だとは…誰も気づかないだろう…。

「睨む相手間違えてるぞ
俺はこっちだ」

溜息を隠さず声をかけると、途端に望を指差して

「まだこの女と続いてるのに、どうして柚ちゃんと結婚するなんて言うのかなぁ。
昔から理解不能の男だったけど、本当、成長しないね」