未来のない優しさ

部屋の外が何だか騒がしくて、望と顔を見合わせて首をかしげた。
女の高い声が段々近づいてきて…。

『…だから、妹なんだって。あいつとはラッキーな事に顔は似てないけど』

…聞き覚えのある声に、小さく溜息をつきながら立ち上がると、望が不安そうに俺を見つめる。

「…大丈夫。…多分な…」

肩をくすめて、ドアを開けたと同時に目の前に飛びこんできたのは、予想通り

「美晴。久々会うにしても騒ぎすぎ。
職場なんだから静かにしろ」

ベビーカーを脇に置いて仁王立ちの美晴は、しばらく会わない間に少し痩せたせいか、更に表情が鋭い。

「…とりあえず中に入れ」

ドアを大きく開いて入るよう促すと、渋々頷いて
ベビーカーをゆっくりと押しながら中に入っていった。