未来のない優しさ

それまでの切ない空気を
切り替えると、望の仕事モードにスイッチが入った。

日曜日に挨拶する事になっている沢木田建設の資料を広げて、きびきびと説明を始めた。

これまでの業務内容や変遷、抱えている問題…

あらゆるファイルの中身を指差す手元を見ていると、キラリと光る指輪。

左手薬指の特別な約束。
きっと恋人からもらったんだろう。
俺が柚にはめた指輪より大きな石が、望を独占したいらしい恋人の意志を表しているようで…。
申し訳ない気持ちになる。

ちゃんと…柚の指輪は
俺の独占欲を発揮させる サポートをしているんだろうか…?
いつもちゃんとはめてるよな…?

そんな細かい事に気を取られながら、望の言葉に耳を傾けていると。