未来のない優しさ

恋人への思いを忘れる事は一切考えてなかったはず。

「健吾が私を突き放してくれたおかげ。
もう、彼とちゃんと話さなきゃって覚悟して…
彼が私を理解してくれてるのがわかったし。

ありがとう…」

「いや…。

俺も望を利用してたからな。
あいつと…似てるから…」

「ん…?あいつって…
何度か健吾のマンションで会った人?」

聞こえるか聞こえないかの俺の呟きに即座に反応されて、思わず望を見つめてしまう。

気付いていたのか?
何度かすれ違ってはいても、確か俺と柚は言葉を交わしていないはず。
なのに、気付いていた?

「…健吾の恋人じゃなかったけど…一番側にいたんだからね。

もしかしたら、恋人に
なるのかなとも思った事もあったし」

切なさを言葉と視線に込めながら話す言葉は決して暗くはない…けれど。

どこか寂しさも感じる。

でも…。