未来のない優しさ

軽く冗談めかしてつぶやくと、ははっと笑って照れ臭そうに背を向けた。

式場内を歩きながらも私を見ない健吾。

相当恥ずかしいに違いない。
昔から、周りの気持ちを敏感に察して、絶えず自分の気持ちは二の次にして。
誰も気詰まりな空気を背負わない為に折り合いをつける事が自然にできていた。

そんな健吾だから、私に嘘じゃなく本音を言う一方で、真田さんが傷痕の事を重く受け止めないように…。

照れ臭いのを我慢しながら冗談にすり替えて言ってくれた言葉は、じわじわと…。

私の気持ちを高校生の頃に戻していく。

幸せだけを感じていた、
未来も明るいと信じていたあの頃に。

「…あんな明るい健吾を
見るの初めてだな…」

「え…?」

振り返ると、腕を組んで
健吾を見ている真田さん。