未来のない優しさ

「わかってるけど…。

まだちゃんとOKしてないのに…。

頑固者…」

ベッドサイドにあったティッシュで涙をごしごし拭きながらの抗議にも、健吾は全く動じる風でもなくて

「柚を手放すなんて、全く選択肢にないから」

あっさりと笑ってる。

「私も、健吾から離れるつもりはないよ…。

結婚しなくたって…私は健吾のものだから…」

鼻水までティッシュで拭きながら言っても甘さなんて全くない…。

それでも健吾の側で過ごす幸せを、高校生の時よりももっと味わってしまった私の素直な気持ち。

言わずにはいられなかった。

「ちゃんと健吾の側にいるし、この指輪だって外せって言われるまでちゃんとはめるし」

一気に吐き出した言葉を、穏やかに受け止めて。
健吾は寂しそうに笑った。