未来のない優しさ

指輪を用意したのはかなり前。
はっきり返事をしない柚の気持ちを考えながら渡しそびれていた。

しばらく様子を見ながら待とうと思っていたけれど。

あまりにも忙しく仕事をこなす柚の体が気になっていた俺は、毎日飲んでいる薬の袋と

「友美先生」

と漏らした柚の言葉を頼りに、柚の通う病院を特定し、友美先生とも会う事ができたのは昨日。

外来診療が終わった夕方、通された部屋に現れた先生は、穏やかな笑顔がホッとする女医さん。

「実物は、本当に男前ね。柚ちゃんと並ぶと美男美女。
マスコミのいいターゲットになっちゃうのも無理ないわね」

ははは…っと軽快な笑いで挨拶も抜きな出会いが少しの驚きと、気持ちを緩めるきっかけになった。

柚の体調が万全じゃないのは明らか。
その事で、更に不安が増す話をされる事態も覚悟していたせいか、友美先生の明るさが俺に少しの希望となった…。

だけど…。

柚が俺に罪悪感を持ってようが、遠慮してようがどうでもいい気持ちになったのは、友美先生との話がきっかけ。