未来のない優しさ

ぐっすりと眠る柚の唇を軽く舌でなぞっても、身動き一つしない。

今夜も腕に抱いて眠るだけで朝を迎えるのか…。

苦笑しながら顔にかかっている髪をかきあげて。

ゆっくりと…柚がいつも身につけているシルバーのチェーンを外す。

チェーンに通されている指輪は相変わらず綺麗な光を放っていて、俺への気持ちも大切にされているように思えて嬉しくなる。

普段服に完全に隠れるよう気を遣ってか、長めのチェーン。

俺の首にもつける事ができてホッとした。
これほどの緊張感は、裁判でも味わえないな…。

しばらくの間、窓から入る光に照らされて幼く見える寝顔を眺めた後。

あらかじめ枕の下に隠しておいた小さな箱を取り出すと。

キラキラと輝く指輪を中から出して、ゆっくり柚の左手に願いを込めて…。