未来のない優しさ




「本当に…泊まるの?」

きょろきょろと部屋中を見た後、柚は目を輝かせながら俺の腕を掴んでぶんぶんと振り回す。

嬉しそうにはしゃぐ柚を見るのは久しぶりで、それだけで愛しく感じた。

ゆっくり抱きしめると、普段とは違った積極的な仕草で抱き返されて、しばらく感じていなかった安堵感も沸き上がって、
柚に飢えてたここ数日の寂しさが消えていく…。

「ねえ、どうしてホテルに泊まるの?」

抱き着いたまま、呟く声は、俺の胸に直接響く。

「柚…風呂入ろう…」

耳元にささやいた途端に強張る体…。
ふっと笑いたくなる。
さっき孝太郎が言ってたけど

「女子高生みたいな反応だな…柚ちゃん」

「なっ…何を…」

「さ、のんびり風呂に入ろうぜ…」

柚が抵抗する前にさくっと抱き上げて、唇を寄せると

「…一緒に入るの?」

心細そうに見つめる目が
一気に俺の足を速めるって事に気付いてないんだろうな…。