未来のない優しさ

「柚ちゃんの異動がなくなって、健吾さんもホッとしてるでしょ。

引っ越さなくて済むし」

何気なく…。
ついでに出た孝太郎の言葉に大きく反応してしまった。

「それだ!ずっとひっかかってたんだ」

あぁどうしよう…。

手にしていた資料を机にばさっと落として、椅子に座りこんでしまった。

何でこんな大切な事を…
忘れてたんだろう。

体調の悪さや仕事の忙しさに追われてすっかり抜け落ちてた…。

「次に住む部屋が…ない」

頭を抱えて呟く私に、孝太郎は一瞬眉を上げて…くすくす笑ってる。

「笑い事じゃないんだけど」

そう。
笑ってる場合じゃない…。