未来のない優しさ

隣の健吾を見ると、優しく笑って頷いてくれる。
普段見せる強い視線じゃなく穏やかな瞳。

その瞳が、再び華穂に向けられて、じっと耳を傾けている。

そして、華穂の話は淡々と。

「生きる為だけに仕事してきた柚が、健吾さんの側にいるようになって…
楽しく生きる為に仕事をするようになって。

キスマークつけて会社に来たり…」

「あ…」

「飲みに行っても健吾さんの晩ご飯の事考えたり…」

「…」

「もともと綺麗だったけど艶っぽさも出すようになって」

「艶っぽさって…そんなのないない」

慌てて否定する私を、華穂は構う事なく

「そうよね?」

と孝太郎に同意を求める。
その顔はすごく真面目でからかってるように見えなくて困る。

艶っぽさって…何?