たくさん作っていたカレーが一気になくなって、
一通り片付けも終わって。
リビングでコーヒーを飲んでいると…それまで何となく聞けなかった涙の訳を、華穂が語り始めた。
「こないだ柚が会社で倒れた日に…大和くんが…
柚に気持ちぶつけてたでしょ?」
小さな声で、健吾をちらり見て気にしながら、華穂は続ける。
「柚の様子を見に医務室に行ったら、大和君が柚を抱きしめて…好きだ…って諦められないって言ってて。
逃げちゃった」
力無く笑う華穂は、私でもなく誰でもなく…ぼんやりとどこかを見ながら
「わかってたんだけど。
柚には敵わないって。
それでも側にいようって思ってたけど…。
もうだめだったんだ。
その日の晩に、話して
でも決められなかったけど、さっき春井には一人で行くって。
結婚はなし。
柚も異動なくなったし
心機一転一人で頑張るって」
はあ…とため息をついた華穂はテーブルに置いていたコーヒーを一気に飲み干した。

