未来のない優しさ

揺るがない気持ちが声と目に表れている。

『離れない』

その言葉にドキドキと鼓動も跳ねて、きっと顔も赤いはず…。

とっくに若くない私に、
本当なら若い頃に経験してたはずの気持ちが生まれて…なんだか妙な…。

「あの…異動なんだけど…なくなって…」

ぼそぼそと私が話し出した時、背後から孝太郎の
声が聞こえた。

「柚ちゃん、いちゃついてるとこ悪いけど腹減った」
「ちょっと…孝太郎…!」

振り返ると、私と健吾を
にやりと笑いながら見ている孝太郎と、まだ目を腫らしている華穂の顔。

孝太郎の腕は、軽く華穂の肩を抱いたままで。

一瞬自然な雰囲気だけど…。

「…え?」

思わず出た声は、私の声じゃないみたいに裏返っていた。