未来のない優しさ

泣き笑いの顔の華穂に
どう言葉をかけていいのか戸惑っていると

「柚」

声が聞こえて振り返るとリビングの入口にもたれて、腕を組んでいる健吾がいた。

小さく手招きされて、華穂が気になったけれど。

『大丈夫です』

と孝太郎が視線を送ってきて頷いているのに気付いて、ためらいながらも
そっと華穂を包んでいた手を離した…。

私が健吾の側に行くと、
代わるように孝太郎が華穂の横に座り…肩を抱き寄せた。

「…えっ。孝太郎…」

まるで何の躊躇もなく
華穂の頭を自分の肩にのせる仕種は…恋人同士のようで。
華穂も、当たり前のように抵抗もしないで…孝太郎に寄りかかっている。

「…どういう事…?」

驚いたまま二人に見入る私は、不意に腕を掴まれバランスを崩してしまった。

倒れこんだのは…健吾の腕の中。