未来のない優しさ

タクシーで急いで家に帰ると、玄関には見慣れた健吾の靴と…どう見ても…ハイヒール。

薄いピンクにラインストーンが散っている…。

どこかで見たような…?

もしかしたら、健吾が誰か連れて来たのかな…?

そう思った途端に不安になってしまう。

何度か綺麗な人と一緒の場面に遭遇してるし。

もしそうなら私はどんな顔すればいいんだろ。

はぁ。

知らないうちに出る小さなため息に気付かず、じっとハイヒールを見ていた孝太郎。

「華穂さん…」

「え…?」

「このヒール、華穂さんのですよ…」

そう呟くと、孝太郎はさっさと靴を脱ぎ、私より早くリビングへ。

ちらりと見えたその横顔には、初めて見る表情…焦りがあって。
いつも飄々としている孝太郎じゃない。