未来のない優しさ

一人暮らしの孝太郎。
たまたま家が近い事もあって、これまでも休日に手料理をふるまった事もある。

平日の夜ってのはなかったけれど…。

疲れた顔でファイルを手にする様子を見ると、なんだかかわいく思えてきた。

「…朝からカレーを作ったから、それとサラダくらいしか出せないよ?」

どう?

と首を傾げて聞く私に反応すると、たちまち目が輝いた…。

「いいんですか?」

「いいよ。

ただ…。二人じゃないけど…」

肩をすくめる私をしばらく怪訝そうに見ていた孝太郎は、思いあたったように目を見開くと

「…俺連れ込んだりしてお仕置きされませんか~?

いや、柚ちゃんはお仕置きされたいってタイプですかあ?」

くくっと笑う孝太郎に顔をしかめてにらみつけても、にやける孝太郎。

「…そんな事言ってからかうなら、明日からの引き継ぎのペース倍速だからね」

ふふんと笑って、私も急いで資料やらファイルをまとめると

「さ、急いで帰ろ」

会議室の電気を消した。