未来のない優しさ

「このプログラムは相模さんに動作確認してもらってね。
来月結婚式で忙しいみたいだから早めにね。

こっちは大和君が最終判断するから回して…。

あと…」

とりあえず急ぎの案件だけしか引き継いでないのに、既に晩の10時をとっくに回ってる。
孝太郎の異動まであと一週間しかないのに、間に合うのかな…。

「…腹すかないですか?」

ファイルを片付けながら
疲れを隠そうともしない孝太郎。

確かに…。

「お腹すいたね…。何か食べて帰る?」

「ん~」

にやりと笑いながら視線を送ってくる孝太郎に
何だか嫌な予感がして身構えてしまった…。

「何…?その笑いは」

「えー。もうすぐ会えなくなる俺に手料理なんて…だめですよね…?
時間も時間だし」

「手料理…?」

「ま、柚ちゃんも疲れてるし…いいです。
近所で何か食べて帰りましょうか」

手早く机の上を片付けて、大きく体を伸ばす孝太郎も疲れてるようで、表情もいつもと違ってる。

「…春井に行ったらなかなか会えなくなるね」

私の言葉にも目を閉じたまま

「そうですね…。休みもあるのか謎だし」