未来のない優しさ

「…柚って…知り合いか?」

つぶやく高橋社長は怪訝そうに首をかしげた。

「…事故の時には…恋人でした」

途端に表情が硬くなった社長。
その直後に現れた…謝罪の瞳。

「野崎くんの…」

「そうです。
事故の後すぐに姿を隠した柚と二年前に再会して…。

年末には結婚するつもりです」

言い切る俺に向けられた社長達の驚いた顔に苦笑しながら…

「多分…柚も覚悟してると…。
葵ちゃんの結婚式に出席すると決めた時に、マスコミから狙われる事もわかってるようでしたから」

「…柚ちゃん…」

そっと、椅子の背に体を預けて息をつく社長のつぶやきは…部屋に響き…
これまで社長が柚に対して張っていた心が少し。

ほんの少しだけ、溶けるのを感じた。