未来のない優しさ




裁判所で熱い時間を過ごした後は、どうしてもクールダウンさせる時間が必要で、事務所近くのカフェでしばらくぼんやりとしてしまう。

今日の裁判で勝った後、原告側弁護士としての一仕事を終えた後の充実感と共に。

訴えられた会社側の誠意のなさに呆然とした。

過労死…。

弁護士という職を目指したのは、この過労死についての割り切れない思いがあったからだ…。

今では、事務所内での俺の専門は労働問題にまつわる事と認識されている。

悪い労働条件の下で働き続け、健康を害したり…亡くなってしまう現状に泣き寝入りする多くの人を支える事。

その思いを現実にする事ができた今も尚、自分の中でまだ消化しきれないあの柚が巻きこまれた事故…。