未来のない優しさ




とにかく体調を回復させなきゃいけない。

お薬の処方箋を出してもらって、病院を出たのは夜の8時。
友美先生には診察時間を延長させてしまった…。

玄関を出た時に、目の前が光って思わず立ちすくむ。

何…?
目の前に手をかざして恐る恐る周りを見ると、大きなカメラを構えた男性がいた。

少し離れた所から私に向かってシャッターを押し続けるのはきっと。

マスコミだ…。

昔散々苦しめられた記憶が蘇る。
入院中も心細くて恐くて。

日々傷めつけられて神経が擦り減っていくのがわかる毎日。

それが嫌で…。
壊れていく自分を守る為に逃げたあの頃の弱い私。

今でも確かに不安感が溢れて、高まっていく鼓動の音しか聞こえない。

それでも…。

本心を閉じ込める強さで自分を守りながら…。

眩しい光に向かって踏み出した。