未来のない優しさ

「どうしたの?野崎くん…」

「…『健吾』だから。昔に戻りたいとは思わないけど、名字で呼ぶのはやめてくれ。柚が柚に思えない」

「…え?どうしたの?急に…」

いつも強気な野崎くんだから、命令口調には慣れてるけど…。

再会してからは、まっすぐに気持ちを言葉にのせて伝えてくれる事なんてなかったのに。

「転勤っていつ?」

「あ…来月の半ば…。夏休みの後にはもう行ってる」