未来のない優しさ

「サラリーマンだな、俺ら」

ふっと聞こえる大和君の声は投げやりで、切ない。

「どう力を出して実績あげても、上の一言で右往左往だもんな」

「…そうだな。

俺も今回は実感したよ。
部長って言っても専務の采配に従うしかないからな」

部長の言葉もどこか冷めているけれど、私と大和君に向ける瞳に揺れる光は暖かくて、言葉の中身ほどの重さは感じない。

「どんなに部下を持って業務で成果あげたって会社の方針で全て白紙に戻されたりって事もあったしな」

小さな笑い声。
部長は椅子の背にもたれて溜息をつくと

「それが組織だからな。
うちみたいな大手なら、背負ってる責任も社員の生活も半端じゃない。

会社の為には自分の意思は後回しで、歯車の一つにならなきゃならない時も多い。

いわゆるサラリーマンの宿命、だな」