未来のない優しさ

そんな事…ちっとも望んでないのに。
それでも会社の決定には従う以外なくて、憂鬱な気持ちを抱えながら辞令を受けた。

私にそんな大役が果たせるのかな…。

コーヒーを飲みながら肩を落とす私の横に座った野崎君は、自分と私のコーヒーカップをテーブルに置いた。

「…?」

「柚…」

「え…?」

柚と言われて心臓がぴくっと軽く跳ねる。
再会してからずっと、名字の『川原』で呼んでたのに。

どういう気持ちで。

『柚』なんだろ…。

私の怪訝そうな視線を気にする風でもなく、ただ私を見つめる野崎君の瞳に圧倒されそうになる。