未来のない優しさ

「ねぇ、野崎君の好きなクッキー夕べ焼いたんだけど食べるでしょ？」

「あぁ、食う」

「じゃ、コーヒー入れるね。クッキーもいっぱいあるし持って帰ってね」

逃げるようにキッチンに来て息を整える。
どうしても、野崎君といると淡く優しい思い出が浮かんできて、まるで今も幸せの延長戦のような錯覚を感じてしまう。

野崎くんが、私の事を親戚として落ち着いて扱う態度を見れば、彼の中では既に試合終了の合図は鳴っているのに…。

私も、延長戦終了を切り出さなきゃいけない。

否応なしに決められていく人生を受け入れて…。