未来のない優しさ

視界の端に揺れた何かに気付いた…。

柚の向こう。

会社の玄関に、呆然と立ち尽くしてこっちを見ている男。

大和っていったな、確か。

さっき柚に電話してきた男。

迎えに来ると言っていたのを俺が断った。

抱き合う俺と柚の姿に苦しげな表情でいるのはきっと。
柚に惚れてるんだろう。

何度か見かけたその度に、柚への想いが見えていた。

きっと柚もあいつの気持ちに気付いてるんだろう…。

俺と離れていた長い間に築いたあいつとの関係が、正直…俺を不安にさせる。