未来のない優しさ

「柚との結婚は、もう決定事項だから。

親達にも了解もらってるし。

…まぁ、美晴は猛反対だけどな」

「どうして…」

「あ。着いたぞ。会社」

反論しようとする私を無視して車は会社の正面に止まった。

「柚…」

「ん?」

シートベルトを外しながら健吾に顔を向けると、突然頭の後ろをぐっとつかまれて…

「んっ…け…」

力いっぱい引き寄せられて…健吾の唇が落とされた。

いつもより熱く深いキスに、ここが会社の前だって事を忘れてしまいそうになる。

「だめ…会社だよ…無理」

つぶやいた瞬間に開いた唇を味わうように這う健吾の舌が…私の砦を崩すように暴れる。

何がなんでも言う事をきかせる…って刻まれるように動く舌が嬉しくて…。
そして、私の手も健吾の首にきつく回り…

「好き…」

吐息と共に出た気持ちで応えていた…。

そんな気持ち…許されないのに…。