未来のない優しさ

「…ごめん。会社から持たされてる携帯だから出ないと」

あからさまに不機嫌な顔をしつつも、私の腕を抑えつけていた手を離してくれた。
ゆっくり起き上がると、目の前には携帯。

「あ…ありがとう」

健吾は私に携帯を手渡すと、背後に回ってぎゅっと抱きしめてきた。
肩に置かれた唇が、敏感になっている肌を這うのを感じながら、電話に出た。

「はい、川原です」

『あ、大和だけど』

「大和くん?どうしたの?トラブってるの?」

あ…。首筋に痛み…。

振り返ると、冷たい健吾の瞳。

『楓銀行のシステムがダウンした。
川原は担当離れてるけど、楓のシステムよくわかってるだろ?
迎えに行くから来てくれないか?』

早口の言葉に、大和の焦りが伝わってくる。