未来のない優しさ

「美晴の子供の名付け親が柚だって聞いて…。

まさか…杏って名前…」

大きく息をつくと

「俺との未来は完全にないんだって思ったし…柚に子供産む気ないのかなって…ちょっと腹もたてた」

「ごめん…。私の杏にはもう会えないから、せめて姪っ子をそう呼びたくて

美晴ちゃんが…杏を一緒に育てようって…」

「は…?

美晴は柚の体の事…」

「知ってたの…。

事故の後、お医者様からその話を告げられた時にも一緒にいてくれたの…」

「…な…何で俺に言わなかった」

低い声が耳元に聞こえる。

健吾の瞳には、苦しみ以外の何の感情も読み取れなくて、一瞬私の心臓も苦しみで止まりそうになる。