「私…。健吾と会えなくなってから、誰とも付き合ってないの」

「…」

言わなくてすむなら言わずにいたいけど…。

折れそうな心を、自分の感情を押し殺して生まれる強さでガードして、
つまりながらも伝えなきゃ…。

「健吾を忘れてなかったのもあるし…体の傷痕を見せる勇気もなかったし…」

俯く私を抱き寄せて、優しく胸の傷を指で撫でてくれると…嬉しい反面切ない。

大きなその手を両手でぎゅっと挟むと、頬にあてて温かさに目を閉じる。

「確かに…私を好きだと言ってくれた人もいたけど、健吾も含めて…私は誰の事も幸せにはしてあげられないの…」

ゆっくり目を開けて、健吾の戸惑う瞳に笑って…。

「だから結婚はできない」

ちゃんと、笑えてる…?