未来のない優しさ

そっと私を掴んでいた手を離して、私の頬に両手を添えて。

ためらいがちな瞳でじっと見つめる。

「柚をこれ以上不幸にするなってさ…」

「…え?」

「俺と結婚するのは…不幸か?」

抱き寄せられて、耳元につぶやかれる言葉にどう答えていいのか…?

あらわになった傷痕を気にしながら戸惑っていると、

「柚の人生をこれ以上目茶苦茶にするなら…俺を訴えて闘うってさ。
弁護士になったのは、柚を守る為らしいよ…。

結婚なんて論外。

はは…。

この胸の傷痕みたいに…
俺は柚にとって邪魔なものか?」

「…美晴ちゃん…?」

「そう。あいつは、兄よりもお前を中心に生きてるからな…」