未来のない優しさ

「やだ…。健吾…見ないで」

半泣きになりながらそう言っても、切なそうに笑って

「俺だけ。柚の傷痕を見るのもキスするのも」

熱い…強い唇が、一番くっきりと残っている胸のふくらみの真下にある傷痕をたどっていく。

「うっ…」

傷痕を見られた恥ずかしさと、見ても拒絶しなかった健吾への安心感…。

色んな感情が押し寄せてきて涙が流れる。

「大丈夫だから…」

そう言ってその涙さえ唇で拭ってくれる健吾…。

「…ごめんね。綺麗な体じゃなくて」

事故以来初めて肌を許した夕べは、部屋の明かりも落としていた。

今はっきりと健吾の目に映っているはずの悲しい傷痕は…。

「他の人みたいに…綺麗じゃなくて…ごめん」