未来のない優しさ

「…合鍵持ってるし。こんな遅くまで仕事か?」

「うん…仕事…。…え?合鍵って、何で持ってるの?」

「柚の母ちゃんにもらった」

「なっなんで!勝手にもらわないでよ」

持っていた鞄を足元にほうり出して健吾の隣に座り込んだ。
カーペットにも書類が広がっている中に埋もれている健吾は表情を変える事なく

「…踏むなよ…」

とぶつぶつ言いながらとりあえず私のスペースを空けてくれた。

「返して」

出した手の平を一瞥すると、呆れたように首をかしげて

「嫌だ」

あっさり言って、差し出した私の手を掴んでぐっと引き寄せた。