金魚玉の壊しかた

女にあらかじめこんな忠告をするなどと、円士郎とは別の意味で不遜極まりないこの男はいったい何なのだと憤って──

視線を逸らしたままの男の横顔を軽く睨めつける。


確かに、


好きになった相手と添い遂げるためならば、今の身分も環境も全てを手放して駆け落ちをする者たちもいるし、

この世で思いを遂げられないのならば共に死んで来世で、などと思い詰めた真似をする者たちもいるが、


自分にそんな真似が許されないことは十分承知していた。


こうして好き勝手な暮らしをしていても、これが永遠に続くものではないことくらい、わかっている。

ああ、煩わしい。

しかし雨宮の家を守らねばならない。

私は結局、その煩わしい名家に育ててもらったのだ。
絵も、学問も、私があるのは雨宮という家のおかげなのだ。


恩には報いなければ。


いずれあの叔父か、兄か、母か、
誰かが縁談をねじ込んで来れば、武家に生まれた女として顔も知らない相手のもとに嫁ぐことになる。


ならば──


だからこそせめて──



今は自由に恋をしていたい。



やがて壊れる時がくる偽物の世界の中にいるとわかっていても。