金魚玉の壊しかた

私は遊水に夢中になっていて、だから円士郎に対する自分の思いには無頓着で──

恋愛の機微というだけではなく、人の心そのものを見通すことに長けた遊水のほうがいち早くそれに気づいた。

いわゆる恋愛的な意味での嫉妬が含まれていたのかはわからないが、「亜鳥はいつも、随分生き生きと円士郎様のことを話すんだな」という遊水の発言は、そういうことだった。



そんな遊水との関係に少し進展の兆しが見えたのは、三月に入ってからのことだった。


四月からは仕事が忙しくなるから、そう頻繁に顔は出せなくなると言う遊水に、

私はその日、絵に使った鳥で作った料理を振る舞ったりしていた。


前に円士郎に食べさせてみたところ、うまいとお褒めの言葉を頂戴していた煮物に、大家のおかみさんからお裾分けでもらった山菜をおひたしにしたものなどを沿えてみた。

円士郎からは絶賛されていたが、遊水の口に合うだろうかと私は内心ドキドキしていて──

まあ、考えてみると
町人の遊水に食べさせる前に、御曹司の円士郎で様子見をしたというのもおかしな話なのだが、


何と言うか……遊水が好きな人だからというだけではなくて……


円士郎は身分が高いくせに、平素の乱暴で粗雑な言動のせいか妙に砕けて気安いところがあるのに対し、

遊水は江戸仕込みの物腰のせいか、垢抜けて洗練された印象が強くて、こちらも身構えてしまうのだった。


心臓がバクバク鳴るほど緊張していたら、私の料理を食べた遊水は

「こいつはいつでも嫁に行けるぜ」

などとあっさり嬉しい言葉をくれたりして、私の髪型や顔を眺めて、


「野暮な詮索かもしれねェが、亜鳥には縁談はないのかい?」


そんな質問をされて、私の心臓はドキンと音を立てた。