金魚玉の壊しかた

ガックリする私の前で、遊水はいつになく昏い目をして呟いた。

「俺は──女を不幸にする気はねえが……幸せにしてやることもできない」

どういう意味なのだろうかと思って、

私は、
円士郎から聞かされた「遊水はただの金魚屋ではない」という話と、
あの深夜の謎の訪問者を思い浮かべざるを得なかった。

「俺はね、亜鳥」

遊水は力無く微笑んだ。


「俺の人生ってヤツは──人様に顔向けできねえようなことばかりで出来上がってる。
それでも、円士郎様のような性根がありゃァ……また違うんだろうがね。

亜鳥が惹かれるのもよくわかる。あの人の真っ直ぐな強さは──俺にはどうやったって手に入らねえモンだ。
だから……俺も結城円士郎様ってェお人に惹かれた」


羨ましくッて堪らねェのさ、と遊水は嘲笑った。


彼の言う「人様に顔向けできない」ことというのが何なのか私にはわからなかったが、

遊水の寂しそうな瞳や苦しそうに歪められた白い顔を見つめていると、私は胸を締めつけられるようで──

必死に言葉を探して──


「で、でも……例えばこの先、あなたと円士郎殿が対立するようなことがあったら……
私は、円士郎殿を裏切ることになっても、あなたの味方をする」


我ながら何を口走っているのだろうかという言葉の羅列が出てきて、言ってしまってから赤面した。

案の定、遊水もこれには、「戦でもやらかそうってのかい。色気があるんだかねえんだかわからねえセリフだな」と吹き出し、

それから悲しそうに微笑んで、

「それは、円士郎様なら裏切っても許してくれると思うからだろう」

と言った。