金魚玉の壊しかた

そんな遊水の様子が唯一違って見えたのは──円士郎に関する話をした時だった。


共通の友人であるわけだから当然、生き物や蘭学の話に加えて、円士郎の話題は遊水との会話でしばしば私たちの口に上った。

何より、あの奇想天外破天荒な御曹司のことについてついて話すのは

──私にとっては楽しかったのだ。


それが何を意味するのか

私が認識するのはまだ先のことだったが。


冬の間は暇だからと言って、金魚が死んでしまってからも遊水は私の長屋に入り浸っていて、

遊水や円士郎と出会って初めての年が明けて、冬の寒さも遠退いた二月のその日も、円士郎の話で盛り上がっていたら──


ふと、遊水の表情が曇った。


「亜鳥はいつも、随分生き生きと円士郎様のことを話すんだな」

じっと私の顔を窺いながら、遊水はそんなことを言った。

「……まあ、面白い奴だからな」

「違いねえ」

私の言葉にそう返したきり、遊水は黙り込んでしまった。


ひょっとして……


どこか沈み込んだ彼の様子を見て、私は淡い期待を抱いた。


これはヤキモチを焼いてくれているのだろうか。


いやいやまさか、と

すぐに馬鹿馬鹿しい考えを振り払う。


円士郎より遙かに女遊びに通じた遊水が、嫉妬などするとは思えない。

そもそも、未だ何一つ手出しされていないこの状況で、彼が私に思いを寄せてくれているかどうかすらも怪しい。


なんて思っていたら──


「嫉妬するねェ」


どこか諦観に似た苦笑を浮かべて遊水がそう言ったので、私はびっくりした。

不覚にもまたまた胸が高鳴ったりして


「円士郎様のようなお人なら──本気で惚れた女も幸せにできるんだろうな。
……この俺とは違ってね」


どうやら嫉妬の意味が違っていた。