金魚玉の壊しかた

「代わりなんていらない」

暗い気分で私は告げた。

「短い間だったけれど、初めて金魚を飼って楽しかったよ。死なせてしまってすまない」

遊水は「そうかい」と言って、黙った。

しばらく頭上から私に注がれる視線を感じて、


「俺は、金魚みたいに亜鳥にも代わりがいる、と言ったわけじゃあないぜ」


驚いて顔を上げると、やっぱりそんなこと考えてやがったか、とでも言わんばかりに遊水がニヤッと笑って、私は顔が赤くなるのを感じた。

心の中を思いきり見透かされていた。


「それに金魚だって、気軽に代わりがいると勧めたんじゃないぜ。亜鳥があんまり悲しそうな顔をしてたからだ。
そこで悪意のある解釈をされても困る」


私の胸の内を完全網羅した牽制だった。

何なのだこの抜かりのないフォローは。
自分に靡いている女の考えなどお見通しということか?


遊水は更に、


「口実が無くなっちまったが、俺はまたここに来てもいいかい?」


などと、魔性の笑顔で完璧な追尾攻撃を仕掛けてきて──


どうやら、既に陥落してしまっているこちらには、拗ねようがヘコんで見せようが、勝ち目はない模様だった。