金魚玉の壊しかた

確かに、
一番最初に遊水を紹介しようとした時にも、円士郎は遊水の周囲に女の影があることを匂わせていた。

私と一緒にいる時に遊水が徹底してその気配を見せないのは──逆に、それだけ女に慣れているということなのだろう。

「そもそも俺に女遊びを教えたのがあいつだしな」

「なに!?」

私はあきれた。
まさかこの御曹司を巷で噂の遊び人にしたのが、遊水だとは。

この国の武家一の名家の嫡男に、あの男は町人の分際で何をしてくれているのだ?


そう、町人の分際……だった。

遊水の身分は円士郎とも私とも違う。


「それに、あんたは武家の女なんだろう?」

私の脳がそれをはじき出した絶妙のタイミングで、円士郎は言った。

「あんたと遊水は結ばれねえよ」



そんなことは



分かり切っていた。



理解していた。


ひょっとして、だからなのだろうかと思った。
結ばれないとわかり切っている遊水とは異なり、円士郎は同じ武家の人間だ。

だから私は、どこかで──この御曹司に──何か期待を持ち続けてしまっていると、そういうことなのだろうか。


「まあ、武家の女に手を出したツケくらいはキッチリ払わせるにしてもよ……」

「待て待て」

円士郎の口に上ったセリフに、私は慌てた。

「心配せずとも、今のところはまだ手など出されていないよ」

残念ながら、という気もするが。

「何だって?」

この私の言葉を耳にして、円士郎は驚いた表情になった。

「冗談だろう?」