「金魚の絵」
ある時、円士郎が格好の良い顔に苦笑を浮かべて言った。
「最近、よく描いてるよな」
私は少し赤くなった。
「飼っているからな」
「ふうん? 普通の絵だな。魚の中身じゃない」
私が描き散らして、そこら中に溢れている緋色の魚の図をしげしげと眺めて、円士郎はぽつりとそう零した。
指摘されて、私がどう返したものかと言葉を選びきれずに迷っていると、
「こういうの、描きたくなる気持ちわかるぜ」
と、円士郎はいつかも見た少年の顔で言った。
ひょっとすると──と、私は思う。
桜と蓮。
扇の両面に描かれた、円士郎のあの絵。
彼もまた、誰かに関係のある二つの被写体を、私と同じような気持ちで描いた、とそういうことなのだろうかと。
それから彼は、少年の顔から女遊びに慣れた青年の顔に戻った。
「遊水に惚れてんのか?」
彼らしいはっきりした物言いだった。
ある時、円士郎が格好の良い顔に苦笑を浮かべて言った。
「最近、よく描いてるよな」
私は少し赤くなった。
「飼っているからな」
「ふうん? 普通の絵だな。魚の中身じゃない」
私が描き散らして、そこら中に溢れている緋色の魚の図をしげしげと眺めて、円士郎はぽつりとそう零した。
指摘されて、私がどう返したものかと言葉を選びきれずに迷っていると、
「こういうの、描きたくなる気持ちわかるぜ」
と、円士郎はいつかも見た少年の顔で言った。
ひょっとすると──と、私は思う。
桜と蓮。
扇の両面に描かれた、円士郎のあの絵。
彼もまた、誰かに関係のある二つの被写体を、私と同じような気持ちで描いた、とそういうことなのだろうかと。
それから彼は、少年の顔から女遊びに慣れた青年の顔に戻った。
「遊水に惚れてんのか?」
彼らしいはっきりした物言いだった。



