金魚玉の壊しかた

小さな偽りの世界の中に閉じこめられた金魚はくるくると、自分の尾を追いかけるようにして泳いでいる。


遊水は、夏でも透けるように白いままの顔で微笑んだ。

「こいつを見て綺麗だと言った女はたくさんいたが、金魚の心配をしたのは亜鳥が初めてだな」

彼は、ぞくっとするような言葉と視線とを私に向けて、

「いいや。大丈夫じゃない」

と、静かに答えた。


「金魚玉の金魚はやがて死ぬ。ずっとこうしてびいどろの中で愛でていたらな」


こんな少ない水じゃあ生きられないさと、
だから、しばらく楽しんだら元の広いタライに戻してやってくれと、

彼はそう言って、


私はふと、思う。


広いタライか。
これもまた人の作った偽りの世界だ。

金魚玉に比べたら広いのは間違いないが、果たしてこのタライもまた、金魚にとっては十分な場所なのだろうか。

私はこの魚たちに、酷くかわいそうなことをしているのではないだろうか。


それは或いは、
魚をさばいて中身を見たり、
料理して我々の腹に納めることよりもずっと──残酷な気がした。


私がそう口にすると、

遊水は優しい眼差しを私に向けて、そうだなと頷いた。

「だがな、こいつらのヒレは川の流れに逆らっては泳げねえし、こいつらのウロコは目立ちすぎて外ではすぐさま他の生き物の餌食になる」


この魚たちは、人の作った偽りの世界でしか生きられないのか。



「金魚ってのは、かわいそうな魚なのさ、亜鳥」



それがどんな思いで放たれた言葉だったのかわからないが、

美しい金魚屋は私にそう言った。