金魚玉の壊しかた

「ああ、受け取ってもらったぜ」

遊水はおかしそそうに肩を揺らしてくつくつと笑った。

「どいつもこいつも目にしただけでどうも身構えやがるな。
遠慮しなくても、こいつは俺の手元に残しておいてもどうせ殺す魚だ」

「殺す……?」

遊水の話によると金魚の盆栽というものは、模様の入りやヒレの形、体型などで、売り物になる金魚とならない金魚を選別して育てるのだそうで、商品価値無しと判断された魚は処分してしまうのだそうだ。

諸君らの時代でも、祭りの金魚すくいの金魚や、ペットショップに流通する魚というのは、品評会レベルに届かない、この「ハネ金」と呼ばれる個体である。


もっともこの桶の中を健気に泳ぐ魚たちは、残して育てても問題はない体型なのだそうだが、育てることのできる数には限りがあるから、どのみち価値のない金魚と一緒に処分してしまう予定であり、だからそこまで気にする必要はないと遊水は言った。

それは──結局、金子に直せば二十両余りの価値があるということじゃないか。

私はそう思ったのだが、遊水が「いらねえなら川にでも流して帰るぜ」と言うので、それももったいないと、結局受け取ることにした。


「虹庵先生にもそう言って渡したのか?」

「まあな」


何やら、言葉巧みに操られた気もするが……。

それから彼は私にこの魚の飼い方を教えてくれた。

タライに井戸水を汲んで、水換えをしながら飼うらしい。
水を換える時は、一気に交換するのではなくて、新しい水に慣らしながらやや時間をかけて徐々に交換するようにすると、金魚が調子を崩さないのだそうだ。

諸君らの時代ならば、熱帯魚ショップで魚を購入すれば店員が説明してくれる「温度合わせ」「水合わせ」という作業である。

エサは水草などを与えるのだそうで、俺が定期的に届けてやると遊水は言った。

「さばいて中身を見なくていいのかい?」

彼はそう言って笑ったが、いくら私でもこんな高級魚の腹を開くのはためらわれたし、

それに──。

「飼っていて、死んでしまったら開いてみるよ」

私はそう答えた。


エサの水草を届けてくれるということは──裏を返せば、金魚を飼っていれば遊水が定期的に会いに来てくれるということを意味していた。