金魚玉の壊しかた

「俺に謝ったって仕方ねえんだがな」

謝罪した私にそう言って、遊水はふっと力を抜いて苦笑した。

「悪かったな、怒鳴ったりして」

彼は私を押さえつけていた手を放して解放して、

円士郎の馬鹿者とは違って、アザになっているようなこともなく力加減は完璧だった。


「それから、あんな人目にさらされた大通りの真ん中で、滅多なことは口にするもんじゃねえぜ?」

遊水は、通りに視線を向けながら言った。

「本気で役人に連れてかれるぜ」

私が御家老の前で喉を突いてやるだの何だのとわめいたのを聞いていたらしかった。


ふん、とそっぽを向きながら鼻を鳴らした私を

遊水はじっと見つめて、


「それとも亜鳥は、お役人に連れて行かれても無事に済むような身の保証があるご身分の人なのかい?」


と言った。


私はぎくりとして、遊水の顔を見た。

彼は奥の読めない微笑を浮かべていた。


「いや……私はただの絵師だ」

「そうかい」


私たちはそんな言葉を交わして、




しかし、この時既に彼は私の正体について何か──少なくとも私が武家の女であるということには──勘づいていたのかもしれない。

それでも彼は何も聞かず、

私も何も語らなかった。