金魚玉の壊しかた

もっともすぐに、

こんな金目のものなど皆無の家に押し入っても何の得もないだろう、

よしんば、私が武家の息女だということを知る者の誘拐目的だとしても、没落して借金まみれとなった雨宮家は狙うまい、

と、常識と照らし合わせて思い直し……


更に不審に思った。


知り合いと何か連絡を取り合っている様子だが──昼間ずっと長屋の中にいたのに、話している戸口の外の相手はどうして彼がここにいることを知ったのか?

円士郎たちが知らせたのだろうか。

それにしたって、こんな深夜に、コソコソと会う必要があるものだろうか。

それこそ、お尋ね者の犯罪者ではあるまいし。


やがて話が終わったのか、遊水はこちらに戻ってきて、

私の様子を窺う気配がした。

慌てて寝息に真似た呼吸をして、眠っているフリをして──


ますますわけがわからなくなる。


私に知られるとまずいようなことなのか?


遊水は私が眠っていると確認してから、再び床に就いたようだったが……結局、この夜の謎の訪問者が誰であったのか、何故あのような形で連絡を取り合っていたのか、

私は訊くことができなかった。